

ユメゴンドウは日本周囲にもいる種で、比較的暖かい海域に生息する小型ハクジラの仲間である。このユメゴンドウを約一世紀ぶりに再発見したのは、国立科学博物館名誉研究員の山田格先生のお父上、山田致知(むねさと)先生である。
1952年、和歌山県太地町を訪問していた致知先生は、当時お金がなく、致知先生のお父様に滞在費などをサポートしてもらっていた。しかし、サポートする代わりに現地の山へ行ってカタツムリ標本を採取してくることを交換条件として提示された。
ある日、約束通り致知先生が山でカタツムリを採取し戻ると、漁師たちがみたこともないイルカがいると騒いでいたため、その骨格を持ち帰った。大英自然史博物館にあるユメゴンドウ2頭の頭骨と比較したところ、このイルカはユメゴンドウであることがわかり、最初の記載から実に約一世紀ぶりの再発見となった。
当初、致知先生の功績をたたえ、このイルカの和名は「ムネサトイルカ」と命名することも推奨されたが、黒田長礼(ながみち)氏(鳥類学者、侯爵)が、ゆめのような再発見だから、和名は「ユメ(夢)ゴンドウ」にしようと提案し、こちらが採用された。
その後、この再発見はScientific Report of Whale Research Institutionに発表されている。